『月曜日の友達』は心地よいノスタルジーを与えてくれる。
「一気読み」というより「一瞬読み」できる作品です。
何せこのマンガは2巻しかありませんから。
[目次]
- 概要
- 推しポイント
- さいごに(おまけ)
1.概要
みんなが少しずつ大人びてくる中学1年生。そんな中であどけなさが抜けない女子・水谷茜。水谷はひょんなことから「俺は超能力が使える!」と突拍子もないことを言う同級生の男子・月野透と校庭で会う約束をする。決まって月曜日の夜に。大人と子供のはざまのひとときの輝きを描く、まばゆく、胸がしめつけられるガールミーツボーイ物語。阿部共実、最新作にして最高傑作、誕生!
月曜日の友達(1)(マンガ)|電子書籍はU-NEXT
かなり著名な作品であるのは事実でしょう。
なぜなら、このマンガがすごい!2018オトコ編(宝島社)第4位に入選も
しているマンガですから!
あの糸井重里氏も所謂「本帯」を担当する等話題になった作品です。
このマンガは何と言っても中学生の独特な雰囲気を再現している点に尽きるでしょう。
中学校って個人的にキラキラしているイメージはないんですよね。
私の学校なんて、特に全員が思春期真っ只中みたいな感じで男女仲が悪かったですし
また、学力に差が付き始めて、優秀と無能のレッテルが成績によってその烙印が押されることも大きいでしょう。同性間でもいろいろありました。
まあ、私が休み時間に小説を読んでいるような陰気な人間だったから,ということもあるかもしれませんが...
そんな薄暗くて、どんよりとした空気感がむしろ懐かしい思いにもさせてくれます。
水谷は大人ぶる皆に疑問を持ちます。話題についていけず、子どもっぽいと揶揄され、
「変」な人間だと不思議がる。
ある意味、水谷は大人なのかもしれません。小学生から2週間経ただけの中学生。
大人になった私たちからすればそんなに刹那的に趣味嗜好が変わるわけがなく、
ただの「大人ぶった行動」である。と解することができるでしょう。
しかし、友達から水谷は「変」だと告げられます。
「変」という言葉にはどこか「お前は皆とは違うんだ」という境界線を敷いている
ように感じる言葉です。まあ、唯一性であると認識して嬉しがる人もいますが...
水谷もそんな疎外感を感じたのではないでしょうか。
自宅でも文武両道で優秀な姉の存在から居場所がありません。
月曜日が憂鬱になります。
だが、そこはマンガ。少年少女が出会わなければ物語は進みません。
水谷と月野は学校の階段で、ある意味ドラマチックな出会いをします。
まあそこは、実際にご覧ください。
水谷はその一件から月野ののことが気になりますが、変な噂しかありません。
このマンガでは表現方法が多種多様で、染髪が許されない中学生なのに、月野だけが髪の毛にトーンが貼られていないことから、その異質さが表現されていて感心します。
場面は変わって、実母と言い争いした水谷は何かに惹かれるがままに校庭へ向かいます。そこで、たまたま月野と出会います。日々の不満をぶつける水谷でしたが、それを認めてくれた月野のことを好意的に思うようになります。
そして、その恩から彼の超能力(?)の実験を毎週月曜日に手伝うようになるのでした。
2.推しポイント
何と言っても先述した独特な雰囲気に限るでしょう。
暗めな画風に対して、登場人物についてはデフォルメされており重苦しくさせません。
会話のテンポもよく、月野の超能力、登場人物の火木さんとのいざこざなど適度に謎と事件が散りばめられており、ページをめくる手が止まりません。
巻数が少なく、私は30分少しで読み終えてしまいましたが、極太の小説を読み終えたような清清しい読了感がありました。
そして、ぜひ2週目を読んで登場人物の文学チックなセリフと緻密に書き込まれた背景にも注目頂けるといいでしょう。
最後に読了後は、amazarashiの「月曜日」をお聴きください。
私はamazarashiのフアンでもあるので『月曜日の友達』はここから入ったのですが、
ボーカルの秋田ひろむ氏が当作品のフアンであったので曲を書き下ろし、
作者の阿部共美氏がamazarashiのフアンでもあったのでPVを書き下ろしたものなので、
完成度が大気圏を突入して、私の胸にクレーターが空いてしまうほどです。
マンガなんて見ねえよ、という方もこの動画だけは見てください。
死ぬほど続きが気になるようにできていますから。
3.さいごに(おまけ)
私が大学生の頃、東北にボランティアに行く前に、空いた時間で東京の本屋に立ち寄り、本を手に取りました。そして、短期間で心がぐちゃぐちゃになるほど感動したことが鮮明に覚えております。正直、その後は余韻からボランティアどころではありませんでした。同時に、中学校の頃の悪い思い出も結局自身が周囲の目を気にして殻を破れなかったというのが大きかったのだなあ。楽しめなくしていたのは自分で、水谷のように悩んで、悩んで、悩みぬいて逃げずに生きていたらと遠い目をしてしまいます。
また、世界の広さを求めて上京したものの、コロナウイルス諸々の影響で挫折をして地元に帰った私と、世界の狭さに悩む水谷と月野に重ねあわせてしまいます。
このマンガを読んでいると、ある人を思い出しました。
その人は、中学2年生になりクラスに友達がおらず、休み時間に独り読書をしていた私に興味深く本の内容を尋ねてきた同級生の女の子です。
そのときは、思春期花盛りの私はつい突っぱねてしまいました。
彼女は明るい子でしたが、同級生のチャラ男と付き合い、嫉妬から仲が良いグループに迫害され、3年生になると不登校になり、卒業式には姿を見せませんでした。
噂では、そのチャラ男の子どもを孕んだとか、精神を病んだとか真偽は不明です。
私は子どもでした、なぜあのとき無愛想な対応をしてしまったのか。
それでも、今はただ彼女が広い世界で元気に暮らしていることを願ってやみません。
自分語り失礼いたしました。
そして、ここまで読んでいただいた方はありがとうございました。